2006年09月05日

伝説のピリオド。

とうとう来てしまいました、この日が。
ニューヨークフラッシング・メドウで開かれているUSオープンテニス
雨で日曜日に順延となった3回戦
負けたらそれが現役最後の試合になるアガシに、全米が熱い視線を送りました。

対戦相手は、ドイツのベンジャミン・ベッカー選手です。
この半年近くでランキングを421位から112位まで上げ、このUSオープンでは
厳しい予選を勝ち上がってきた新鋭25歳の急成長選手です。

正直、この試合に対してはイヤな予感がありました。
こうしたグランドスラム大会では、予選を勝ち上がってきた選手の方が
シード選手よりも「勢い」がある場合が多く、過去何度もチャンピオンたちが
予選上がりの選手にまさかの場面で足元をすくわれるのを目にしてきたからです。

結果は、ネットで今朝知りました。
案の定、アガシには酷なスコアの厳しい試合でした。
5-7, 7-6 (4), 4-6, 5-7。
アガシがついに、その現役生活に終止符を打つことになったのです。

アガシ、伝説の終焉.jpg

そしてWOWOWで、0時からオンエアされたダイジェストを正座して観ました。
結果を知らずに観たとしても、スコア以上にアガシにとって厳しい試合内容でした。
坐骨神経の損傷により激痛の走る背中を、コルチゾン注射でだましだまし、
アガシは渾身の力を振り絞ってコート内を走り回り、時に全盛期を彷彿とさせる
強烈なショットを放ってベッカーを振り回します。
しかし、ベッカーの勢いは誰も止めることはできませんでした。

何度か試合の流れがアガシに傾きかけ、一時は第3セットのセットポイント
つかむ場面もあったんです。でも、これがアガシの「しおどき」だったんでしょう。

第4セット、アガシ5-6で迎えた最後のチェンジオーバー。
次のゲームのサーバーはベッカーで、彼がサービスキープすれば試合が決まります。

その時のアーサー・アッシュ・スタジアムにいた2万3千7百人の観衆の静まり返り方、
これは20年以上USオープンを観続けてきた私が初めて目の当たりにする
一種「異様」な雰囲気でした。世界一、観戦マナーの悪いことで知られるNYの
テニス観戦客が、総立ちで固唾を呑んでアンドレの最後を見守っているのです。
誰も身じろぎすらしません。咳やくしゃみすら、できない雰囲気なんです。

そして最終ゲームが始まりました。
ビッグサーバーであるベッカー選手は、アガシに1ポイントも与えず、
3つあったマッチポイントを最後はサービスエース1本で決めました。
もうずっと前からスタンディングオベーションの体制で試合の展開を見守っていた
オーディエンスたちからは、静かな、けれども力強い拍手がアガシに贈られました。

アガシが、泣いています。
そして、なんと勝った対戦相手のベッカーまでも、泣いているのです
試合後のインタビューでベッカーはアガシについて
「彼は僕のアイドルだった。まるで映画の中にいるみたいだった。
彼の最後の対戦相手になれたなんて、光栄だよ。
観客が全員彼を応援するのは、仕方がないさ。彼はそれだけ偉大な選手だから」

とアガシを全面的に称えていました。

アガシ敗退のざわめきは、隣のアームストロング・スタジアムで試合をしていた
サフィン選手たちにも聞こえるほどの大きさで、この試合を観ていた観客までも
アガシのいるコートに向かって大きな拍手を送っていました。

アガシの目から、涙がこぼれ落ちます。タオルで頭を覆い、うつむき、
そして顔を上げて総立ちの観客に視線を送ります。
何度も椅子から立ち上がって、いつもの敬礼を四方八方のファンに捧げます。

やがて、試合を中継していたCBSのマイクを使って観客にお礼の言葉を述べました。
「21年間、変わらぬ声援を送ってくれて、心から感謝している」と。
それは感動的な場面でした。私もぽろぽろ涙を流しながら、画面を見つめます。

最後は足を引きずるようにプレイしていた今日のアガシ。
でも、私の記憶の中の彼は、今でも世界一のリターナーです。
最速サーバーの時速よりも速いスピードで相手の足元に狙いすましたレシーブを
返すアガシ。ネットに出てくる相手のサイドを抜く鋭いパッシング
頭上を越え、ベースラインぎりぎりに落ちる芸術的なトップスピンロブ
炸裂するフォアの強烈なウィナー。バックハンドから放たれるダウンザライン

何度も何度も目にしてきた、数々のアガシの雄姿と名試合。

彼は、この20年、私のヒーローでした。

ありがとう、アガシ。たくさんの感動と決して色あせることのない記憶。

試合後のインタビューで彼がすっきりとした笑顔で言った言葉が忘れられません。
「別れが悲しければ悲しいほど、過去の経験への喜びは増すんだ」

忘れません、ウインブルドン、全米、全豪、全仏の4つのグランドスラム大会で
優勝トロフィーを高らかに掲げ、誇らしげにキスをしたアガシの姿を。


彼は、記録にも記憶にも永遠に残る、レジェンドになりましたぴかぴか(新しい)

ニックネーム ゆき at 02:47| Comment(2) | TrackBack(1) | ☆雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。TBピープルから参りました。
想いが溢れるゆきさんの記事を読ませていただいて、
また涙ぐみそうになりました。
最後のベッカーの一本に身動き出来なかったアガシ、
ああこれが体力の限界なんだな、と思いました。
最後までいい試合を見せてくれたアガシに感謝です(泣

TBさせていただきました☆
Posted by うな at 2006年09月05日 13:19
うなさん、はじめまして!ようこそようこそ、お越しくださいました♪
コメント&TBも、ありがとうございます(^^)
ロックがメインでスタートしたこのブログですが、テニスが“ロック”しているアガシも
本当に本当に大好きで、何度か記事にもしてみました。
だからこんな風に同じアガシファンの方が読んでくださって
感想まで残してくださると、心から嬉しく「あぁ〜良かったぁ♪」と思います!

>ああこれが体力の限界なんだな、と思いました。
本当にそうでしたね。
ここまで続けてこられたことが一種の奇跡ですもんねぇ。
でも、アガシファンでいられて幸せでした☆

私もうなさんのところにお邪魔させていただきますね!
また私の過去のアガシ追っかけエピソードなど書きたいなと思っていますので(笑)
ぜひぜひ遊びに来てくださ〜い、お待ちしています♪
Posted by ゆき→うなさん at 2006年09月06日 00:00
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